コロナショックの影響で上場中止が続出!今後はどうなる?

最終更新日:
2020年4月20日

 2020年3月に、「コロナショック」と呼ばれる、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う世界的な金融危機が起きました。株式市場はもちろん、IPO市場に大きな影響を与えています。コロナショック以降に上場した企業は大半が公募割れし、さらに3月から4月にかけて続々と上場中止が発表されるなど、大混乱を引き起こしました。特に4月は上場予定企業の9割以上が上場中止になる異常事態です。

 このコラムでは、3月と4月の上場中止の状況や、直近でもっとも大きな金融ショックであるリーマンショックの状況を参考に、今後のIPOがどうなるかを分析していきます。

コロナショックによる上場中止一覧

 3月と4月の上場企業のうち、コロナショックによる上場中止を発表した企業をまとめました。

表は左右にスライドしてご確認ください
上場
予定日
企業名 総合
評価
市場 上場
承認日
中止
発表日
3/18 Fast Fitness Japan
(7092)
D 東証
マザーズ
2/12 3/13
3/24 ペルセウス
プロテオミクス

(4882)
D 東証
マザーズ
2/17 3/12
3/26 ウイングアーク1st
(4432)
D 東証 2/20 3/10
3/30 バリオセキュア
(4494)
D 東証
2部
2/21 3/18
4/2 コパ・
コーポレーション

(7689)
C 東証
マザーズ
2/27 3/24
上場
予定日
企業名 総合
評価
市場 上場
承認日
中止
発表日
4/7 アイキューブド
システムズ

(4495)
B 東証
マザーズ
3/3 3/19
4/8 アルマード
(4932)
C 東証
マザーズ
3/4 3/18
4/9 ロコガイド
(4497)
C 東証
マザーズ
3/4 3/18
4/9 コマースOne
ホールディングス

(4496)
D 東証
マザーズ
3/4 3/31
4/9 ステムセル研究所
(7096)
C 東証
マザーズ
3/5 3/24
上場
予定日
企業名 総合
評価
市場 上場
承認日
中止
発表日
4/17 サイバートラスト
(4498)
C 東証
マザーズ
3/13 3/31
4/20 Speee
(4499)
D 東証
マザーズ
3/16 3/31
4/22 アールプランナー
(2983)
D 東証
マザーズ
3/18 4/2
4/23 スマート・ソリューション
・テクノロジー

(6598)
D 東証
マザーズ
3/19 4/3
4/24 SANEI
(6230)
D 東証
2部
3/19 4/7
上場
予定日
企業名 総合
評価
市場 上場
承認日
中止
発表日
4/24 さくらさくプラス
(7097)
D 東証
マザーズ
3/18 4/16
4/28 ヤマイチエステート
(2984)
D 東証
2部
3/23 4/9
4/30 GMO
フィナンシャルゲート

(4051)
C 東証
マザーズ
3/25 4/10
上場
予定日
企業名 総合
評価
市場 上場
承認日
中止
発表日

 3月は、28社中4社が上場を中止しました。いずれも3月下旬にかけての上場案件で、上場中止が発表されたのは3月中旬以降でした。ちょうどコロナショックで株式市場が暴落しているときなので、上場のタイミングが悪いと判断したのでしょう。

 4月は、なんと15社中14社が上場中止を発表しました。上場を取りやめなかった3月末の企業が、次々と「仮条件の引下げ」や「公募割れ」となるのを見て、上場中止を判断したのでしょう。

 コロナショックの影響が大きかった3~4月を合わせると、43社中18社(全体の約40%)が上場中止を発表しました。これだけ多くの企業が上場中止となるのは、はっきり言って異常事態です。いつになったら、IPO市場に活気が戻るのでしょうか。リーマンショック時と比較しながら考えていきましょう。

リーマンショック時の上場中止情報

 リーマンショックとは、2007年のサブプライム住宅ローン問題からはじまり、2008年のリーマン・ブラザースHDが経営破綻したことにより、世界的に広がった金融危機のことです。日経平均株価は12,214.76円(9月12日終値)から一時6,994.90円(10月28日安値)まで暴落しています。リーマンショックの影響が大きかった2007~2009年について、上場中止の件数を調べてみました。

・2007年 新規承認126社中、中止5社
・2008年 新規承認53社中、中止4社
・2009年 新規承認19社中、中止0社

 2007年と2008年は上場中止が発表されていますが、数で見れば年間数社しかありませんでした。2020年はすでに15社が上場中止を発表しており、リーマンショックを超える多さとなっています。リーマンショックよりも上場中止が多いのには、コロナショックが起きた時期が関係しているようです。

 リーマンショックが起きたのは9月でした。9月や10月は上場企業数が比較的少ない月だったので、リーマンショックが起きても上場を中止する企業が出にくかったと考えられます。対してコロナショックが起きたのは3月でした。3月は例年上場企業数が多い月であり、さらに2020年4月は新規承認が相次いでいたのです。

 リーマンショックとコロナショックでは、コロナショックの方が直後に上場を控える企業が多かったため、上場中止の数が増えてしまったと推測できます。

 2009年もリーマンショックの影響が残っていましたが、上場中止を発表した企業はゼロ件です。不況の真っただ中ということもあり、申請前に上場を先延ばしした企業が多かったのでしょう。その証拠に、2009年の上場予定企業数は2007年の6分の1以下です。

 それでは、リーマンショックの前後に上場した企業の初値はどうなったのでしょうか。

リーマンショック前後の初値

 リーマンショック時に上場した企業において、初値が「公募価格を上回った」場合は勝ち、「公募割れした」場合は負け、同じときは分けとして、リーマンショック時の状況を振り返っていきます。

・2007年 89勝29敗3分け(勝率74%)
2008年 20勝26敗3分け(勝率41%)
・2009年 13勝4敗2分け(勝率68%)
・2010年 10勝9敗3分け(勝率45%)
・2011年 19勝14敗3分け(勝率53%)
・2012年 37勝9敗0分け(勝率80%)
・2013年 52勝1敗1分け(勝率96%)
・2014年 59勝15敗3分け(勝率77%)

 リーマンショックが起きた2008年は、2007年から始まった不況がピークを迎えた年でした。そのため、初値が上昇した企業は41%と最も低くなっています。2009年は68%とかなり改善が見られますが、これは質の高い企業だけが上場したため、と考えられます。しかしその後は東日本大震災の影響もあり、再び伸び悩んでいます。その後2012年になって、ようやく勝率が80%を超えてきました。

リーマンショック前後のIPO件数

 2009年に、上場企業数が大幅に減少したことは説明しましたが、リーマンショック前後の件数はどのように変化したのでしょうか。2007年から2019年までのIPO新規承認数をグラフにしました。

新規承認数のグラフ

 2007年はIPOブームが到来し、かなりIPO件数が多い年でした。その後2008年にリーマンショックが起こると、急激に件数が減っていきます。2009年に約6分の1まで減った後、徐々に戻りますが、2011年の東日本大震災で失速します。2015年からは安定して90件を超えるようになり、ようやく現在の水準まで戻っています。

 先ほどIPOの勝率でも2012年から80%を超えていました。つまり、2012年にはIPO市場に投資家の資金が戻ってきたと考えられるのです。東日本大震災で市場が混乱した2011年を除くと、だいたい3年ほどでIPOの環境は元通りになっています。

今後のIPOはどうなる?

 リーマンショック時の状況から、コロナショック後のIPO市場には次のようなことが考えられます。

・投資家の資金が戻るまで3年ほど初値が上がりにくい状況が続く
・数年間は新規承認件数が少ない状態が続く
・1~2年以内に発表される新規承認は、質の高い企業だけに限られる可能性が高い

 しばらくはIPOにとって逆風が吹きそうです。しかし、逆風の中で発表される新規承認は、初値が上がりやすい「質の高い企業」に限られる可能性があります。銘柄をしっかりと見極めれば、IPOで利益を上げられるかもしれません。

 また、投資家の資金がIPO市場から流出しているので、ライバルが少なくなりそうです。質の高い銘柄の当選を狙うチャンスでもあるので、今のうちに口座開設をするなど準備を進め、戦略を練っておきましょう。

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