トップページ > コラム > スピンオフ上場とは?しくみやIPOとの違いを解説します!
株式を上場する方法はIPO以外にもあります。そのうちのひとつが「スピンオフ上場」です。これは、すでに上場している企業が事業や子会社を切り離し、独立した会社として上場させる方法です。
通常のIPOとは上場までの流れが少し違うので、むずかしそうに感じるかもしれませんが、基本的なポイントを知っておけばそれほど複雑ではありません。
このコラムでは、スピンオフ上場についてわかりやすく解説します!しくみから実際に利用した企業まで、しっかり説明していますので、ぜひ最後まで読んでください。
「スピンオフ上場」は、会社の事業の一部や子会社を親会社から切り離し、独立した別会社として上場させることです。
スピンオフ(spin-off)は英語で「分離・独立したもの」という意味です。

<引用:経産省資料より>
事業や子会社を切り離すので、その分親会社の価値は減ります。その代わり、株主にはスピンオフ後の会社の株式が自動的に配られるため、スピンオフの前後で株主の資産価値が大きく変わらないように配慮されています。
通常のスピンオフ上場では、切り離された会社と元の会社は完全に別会社となります。しかし、お互いの関係性を少し残して上場する、「パーシャルスピンオフ」という方法もあります。
パーシャル(partial)は英語で「部分的」という意味です。
上場までの基本的なステップはスピンオフと同じですが、元の会社が株式の一部を保有し続ける点が大きな違いです。資本関係をあえて少しだけ残しておくことで、グループのブランドを引き続き使用できたり、グループ内でゆるやかな連携を維持できたりといった強みがあります。

<引用:経産省資料より>
ただ、親会社の影響力が強すぎると完全な独立と言えなくなってしまいますよね。そのため、新会社の自主性を保つためのルールとして、親会社が保有できるのは株式全体の20%未満と定められています。
スピンオフ上場は、元の会社にも新会社にも、それぞれメリットとデメリットがあります。ここからは、両社の立場から見ていきましょう。
元の会社にとっての最大のメリットは、主力事業に集中できる点です。スピンオフを選択する企業の多くは、多角的に複数の事業を展開しています。本業と関係が薄い事業を切り離すことで、これまでその事業に割いていた資金や人材を、主力事業に全力投入できるようになります。
デメリットは、事業を切り離すことで、一時的に会社の規模や利益が小さくなる可能性がある点です。一見するとマイナスに感じられますが、主力事業に集中することで、その後の成長につながる可能性もあります。
また、株主には切り離された会社の株式が分配されるため、元の会社の価値が小さくなった分を新会社の株式で補う形になります。理論上は、スピンオフの前後で株主の資産価値が大きく変わらないようになっています。
スピンオフで切り離される会社にとってのメリットは、経営判断を自社だけで下せるようになる点です。スピンオフ前は、グループの方針や意思決定に従う必要がありましたが、独立によってそうした制約はなくなります。一上場企業として、資金調達や投資を進められます。
デメリットは、独立した会社として経営や管理の体制を整えなければならない点です。また、これまではグループとしての信用力を活かして資金を調達したり、取引先との関係を築いたりしていた場合も、独立後は自社の力で対応する必要があります。
日本でスピンオフが広がるきっかけのひとつとなったのが、税制面での後押しです。税制改正前は、スピンオフで事業や子会社を切り離すと、元の会社や株主に税金がかかってしまう可能性があり、大きなハードルになっていました。
2017年度の税制改正で、スピンオフした場合も一定の条件を満たせば課税のタイミングを将来に先送りできる措置(課税の繰り延べ)が認められ、株主への課税も対象外となりました。
さらに2023年には、元の会社が新会社の株式を一部保有し続ける「パーシャルスピンオフ」についても特例がつくられ、課税の繰り延べが認められるようになりました。この特例は当初期間限定でしたが、2026年度税制改正によって期限の定めが撤廃されました。
このように段階的に制度が整えられたおかげで、2020年以降スピンオフを実施する企業が徐々に増えています。
ここまでは企業側から見たスピンオフについて説明してきました。では、投資家の立場から見て、通常のIPOとスピンオフ上場ではどんな違いがあるのでしょうか。
スピンオフ上場では、公募や売出しをおこなわずに上場するケースがあります。このような上場方法を「ダイレクトリスティング(直接上場)」といいます。日本ではまだ事例が少ないですが、米国では上場時に新たな資金調達を必要としない企業などがダイレクトリスティングを選ぶケースもあります。
ダイレクトリスティングの場合、通常のIPOのように抽選で公募価格の株式を購入することはできません。新会社の株式を取得するには、①上場後に市場から購入するか、②基準日時点で元の会社の株主になっておき株式の分配を受けるか、の2つの方法があります。
2025年9月にパーシャルスピンオフで上場したソニーフィナンシャルグループは、2000年以降では国内初のダイレクトリスティングということで大きな話題になりました。
株主への株式分配と同時に、公募や売出しをおこなうケースもあります。
2020年にコシダカホールディングス(2157)からスピンオフしたカーブスホールディングス(7085)や、2025年にHamee(3134)からスピンオフしたNE(441A)は、既存の株主への株式分配と同時に、公募や売出しを実施しました。
このようなケースでは、公募・売出し分については通常のIPOと同じ感覚で抽選に参加できます。ただ、株式の分配を受けた株主が上場日に売却する可能性もあるので、初値を予測する難易度は少し上がります。
では最後に、実際にスピンオフを利用して上場した企業を見てみましょう。

| 上場日 | スピンオフ銘柄 | 元の会社 | 公募・売出し | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 2020年3月2日 | カーブス ホールディングス (7085) |
コシダカ ホールディングス (2157) |
あり | - |
| 2024年10月1日 | シマダヤ (250A) |
メルコホールディングス (現バッファロー) (6676) |
あり | - |
| 2025年9月29日 | ソニー フィナンシャルグループ (8729) |
ソニーグループ (6758) |
- | パーシャルスピンオフ |
| 2025年11月4日 | NE (441A) |
Hamee (3134) |
あり | - |
| 2026年9月29日 | クラサスケミカル (646A) |
レゾナック・ ホールディングス (4004) |
- | パーシャルスピンオフ |
2020年にカーブスホールディングスが上場してから、徐々に件数が増えています。税制改正によりパーシャルスピンオフの選択肢が増えたことで、今後さらに件数が伸びそうです。
通常のIPOとは違う点が多いですが、元の会社の株式を持っていれば自動で新会社の株式がもらえるのは知っておいて損はありません。注目企業の事業や子会社がスピンオフ上場するのであれば、事前に親会社の株式を購入しておくのも手でしょう。
特殊な例ではありますが、上場手法のひとつとして覚えておきたいですね!
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