ソニーフィナンシャルグループが再上場へ!「パーシャルスピンオフ」って何?

ソニーグループ公式サイト画像

<引用:ソニーグループ公式サイト>

 2025年9月29日、ソニーグループ(6758)の完全子会社のソニーフィナンシャルグループが、東証プライム市場への再上場を予定しています。日本で初めての「パーシャルスピンオフ」を利用した上場と言うことで、大きな注目を集めています。

 そう聞いても、「パーシャルスピンオフって何?」、「通常のスピンオフとどう違うの?」、「IPO抽選はあるの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。このコラムでは、パーシャルスピンオフの仕組みを整理し、ソニーフィナンシャルグループの株式の購入方法まで、丁寧に解説していきます!

パーシャルスピンオフとは

 パーシャルスピンオフとはスピンオフの一種です。スピンオフとの大きな違いは「親会社が子会社の株式を一部持ち続ける」というところです。

そもそもスピンオフって何?

 パーシャルスピンオフの仕組みを理解するために、まずはスピンオフについて押さえておきましょう。スピンオフとは、親会社が事業の一部や子会社を分離させ、独立させることです。

 会社の一部をスピンオフで分離すると、その分だけ親会社の価値は下がります。そこで、親会社の株主に不利益にならないよう、親会社は保有している子会社株式の全部(もしくはほぼ全部)を親会社の株主に現物配当として配ります。こうすることで、親会社の株主は親会社株式と子会社株式の両方を持つことになり、合計の価値は理論上変わらないと考えられます。「理論上」というのは、実際の株価は変動するため、必ずしも理論通りになるとは限らない、という意味です。

スピンオフイメージ画像

<引用:楽天証券

 また、スピンオフと同時に上場することを「スピンオフ上場」といいます。2020年上場のカーブスホールディングス(7085)や、2024年上場のシマダヤ(250A)は、スピンオフ上場でした。

<過去にスピンオフ上場した企業>

上場日 企業名 親会社(スピンオフ元)
2020年3月2日 カーブスホールディングス(7085) コシダカホールディングス(2157)
2024年10月1日 シマダヤ(250A) バッファロー(3352)
[旧メルコホールディングス]

パーシャルスピンオフとは

 パーシャルスピンオフはスピンオフと違い、親会社が子会社の株式を一部持ち続けます。会社として独立はしますが、資本関係というつながりが残るので、グループの一員として連携しやすい状態はつづきます。 つまりパーシャルスピンオフというのは、親会社の影響をほどほどに残しつつ、子会社が柔軟に経営を進められるようになる、というイメージです。

パーシャルスピンオフイメージ画像

<引用:ソニーグループ公式サイト>

ソニーフィナンシャルグループとは

 続いて、今回パーシャルスピンオフを利用して上場するソニーフィナンシャルグループ(以下ソニーFG)について解説していきます!

 ソニーFGは、ソニーグループの金融部門をまとめて運営する会社です。ソニーグループ創業者盛田昭夫氏が「ソニーグループに金融部門を持ちたい」と考えたのがきっかけで、1979年に生命保険の『ソニー生命』が誕生しました。その後、『ソニー銀行』や『ソニー損保』、介護事業の『ソニー・ライフケア』と、事業の幅を広げてきました。早くからインターネットでの手続きに対応するなど、顧客本位の便利なサービスを重視しています。

ソニーFG組織画像

<引用:ソニーグループ公式サイト>

  親会社のソニーグループは、家電からエンターテインメントまで幅広い事業を展開する総合企業です。液晶テレビ『BRAVIA(ブラビア)』やゲーム機『PlayStation』の生産・販売に加え、映画の『ソニー・ピクチャーズ』や音楽の『ソニー・ミュージック』など、世界的に知られるブランドを展開しています。

2007年に1度目の上場

 ソニーFGは2007年、東証一部に上場しました。このときは、ソニーグループ子会社のまま「親子上場」という形での上場でした。上場の目的は、他社との提携やM&Aをしやすくしたり、会社としての知名度を上げたり、事業拡大のための資金を集めやすくすることでした。

 しかし2020年、ソニーグループがソニーFGのすべての株式を取得して完全子会社化したため、上場は廃止されました。ソニーグループは上場廃止の理由の1つとして、親会社と子会社の両方が上場していると、それぞれの株主への配慮が必要となり、結果としてグループ全体で素早い意思決定を行うのが難しかった、としています。

2025年9月、再び上場へ

 上場廃止から約5年後の今年、ソニーグループはソニーFGを再上場させることにしました。その理由は、ソニーグループとソニーFGそれぞれが、自分の事業に集中するためです。

 金融事業は規制が厳しく、安定したサービスを続けるためには、まとまった資金が必要です。一方、ソニーグループとしては、エンターテイメントや半導体といった成長分野に、できるだけ資金を回したいのが本音です。そこでソニーグループは、ソニーFGを再上場させることにしました。再上場すると、ソニーFGは独自で資金を集めやすくなり、ソニーグループは成長分野に集中投資できるようになります。

なぜソニーグループはパーシャルスピンオフを選んだのか?

 ソニーFGの今回の上場でパーシャルスピンオフを採用した理由は、大きく分けて①「SONY」ブランドを継続使用できる②税制優遇を受けられるの2点です。

①「SONY」ブランドを継続使用できる

 パーシャルスピンオフの場合、ソニーFGはソニーグループとの関係がなくならないので、「SONY」というブランドを引き続き使用できます。これまで親しまれてきた、信用のあるブランドを使い続けられるのは、顧客の安心感につながる大きなメリットと言えます。

「SONY」ブランドイメージ画像

<引用:ソニーグループ公式サイト>

②税制優遇を受けられる

 2023年に新設された「パーシャルスピンオフ税制により、株式を分ける時の税負担を大幅に軽減できるようになりました。この税制優遇は当初、通常のスピンオフにしか適用されなかったのですが、2023年の改正により、パーシャルスピンオフも優遇を受けられるようになりました。

 実はこの制度は株主にも関係があります。ソニーグループ株主はソニーFGの株式を現物配当として受け取りますが、税制優遇のおかげでそれに対する課税はありません。

IPO抽選はある?

 さて、新規上場と聞いて気になるのは、「IPO抽選はあるのか?」だと思います。残念ながら、今回のケースはIPO抽選はありません

 今回の上場でIPO抽選がないのは、ダイレクトリスティング(直接上場)方式での上場だからです。ダイレクトリスティングでは、通常のIPOのように新しい株式を発行したり売り出すことなく、もともとある株式だけでの上場となります。「ダイレクトリスティングという単語も初めて聞いた」という方が多いかもしれません。国内では1990年代に一度だけ前例があるものの、2000年以降では初めてのことだからです。

ダイレクトリスティング(直接上場)とは

 ダイレクトリスティング(直接上場)とは、通常のIPOのような公募・売り出しといった株式の販売をせず、もともとある株式だけで上場する方法です。会社として資金を集めることはできませんが、証券会社への手数料など、コストを抑えられるというメリットがあります。また、既存の株主にとってこの方法は、自分の持っている株の希薄化が起こらないので安心です。「株の希薄化」とは、新たに発行された株式が市場に大量に流れることで、1株あたりの価値が下がってしまうことです。

ソニーフィナンシャルグループの株を手に入れるには?

 ソニーFGの株を手に入れる方法は2通りあります。①上場後に購入する②事前にソニーグループの株を買っておくのどちらかです。

①上場後に買う

 上場日の9月29日からは、誰でもソニーFGの株式を売買できるようになります。 ネット証券を開設しておけば、スマホやパソコン、どこにいても株の値動きをチェックできます。お得なキャンペーンを開催している証券会社もありますので、ぜひチェックしてみてください。

②事前にソニーグループの株を買っておく

 2つ目は、ソニーグループの株を保有して「現物配当」としてソニーFGの株式を受け取る方法です。
 9月26日の大引け(その日の最後の取引)時点でソニーグループの株式を保有していると、自動でソニーFGの株式が割り当てされます。現物配当なので特に手続きは必要ありません。もし購入を検討される方は、今すぐ動いた方がよさそうです。

 ソニーグループの株式1株につき、ソニーFGの株式を1株もらえるということは、1単元(100株)に到達していない、ミニ株などの単元未満株の株主も対象となります。 ソニーFGの株式を買いたいけどタイミングに迷っている、という方は、上場前と上場後で分けて購入してみるのも1つの方法かもしれませんね。

 ちなみに、分配されたソニーフィナンシャルグループの株式の口座区分ですが、多くの証券会社ではソニーグループの株式と同じ口座区分(一般、特定、NISA)に入るようです。※詳細は今お使いの証券会社で直接ご確認ください

ソニーFGの株価はどうなる?配当は?

 ソニーFGが上場したら、ソニーFGとソニーグループ、それぞれの株価はどうなるのでしょうか?

ソニーFGの株価はどうなる?

 今回の上場はIPOとは違い、公募価格がないので、正確な株価の予測は難しいです。 東証は幹事を務める野村證券が提出した参考価格をもとに、上場日の取引開始前に「板中心値段」という、取引の目安となる価格を発表するとのことです。

ソニーグループの株価はどうなる?

 ソニーFGが独立することで、ソニーグループ全体の価値はその分減ります。そのため、ソニーグループの株式は株価の調整が入り、ソニーFG分の価値だけ下がる見込みです。

ソニーFGの配当利回りはどれくらい?

 上場後、ソニーFGは株主への還元を重視する方針です。会社発表の資料によると、年間500億円を配当金に充てる予定です。また、金融・経済専門メディアBloombergによると、ソニーFGの時価総額は1兆円を上回る可能性があるそうです。 この数字を目安にすると、配当利回りはざっくり次のように計算できます。

500億円(年間配当金額)÷1兆円(時価総額)=5%(配当利回り)

単純計算ではありますが、配当利回り5%というのはなかなかの高水準ですね。配当目的で中長期的に保有しようと考える投資家も出てきそうです。

1,000億円規模の自己株式取得を予定

 ソニーFGは上場から2027年3月末までに、1,000億円を目安に自社株を買い戻す予定です。自社株を買い戻すと市場に出回る株式の数が減ります。そのため一般的に、自己株式の取得が行われると1株あたりの利益や資産の割合が高くなり株価が上がりやすくなると考えられます。株主にとってはポジティブなニュースです。

おすすめの証券会社のご紹介

 ソニーFGは9月29日上場予定です。株式の購入をしてみたいけど、まだ証券口座を持っていない、という方は、早めに口座開設して上場日に備えましょう。ネット証券は自宅や外出先でも口座開設が可能で、さらにはお得なキャンペーンやプログラムを実施している場合もあります。もしどこで口座開設しようか迷っている方は、当サイトがまとめたキャンペーン一覧を参考にしてみてください。なかには、当サイト限定のタイアップもあるので必見です!

まとめ

 パーシャルスピンオフを中心にソニーFGの上場について解説しました。スピンオフ自体も事例が少なくなじみが少ないですが、基本的な動きはそこまで複雑ではありません。

 今回はさらに直接上場ということで異例中の異例となる上場です。IPO抽選がありませんが、事前にソニーグループの株式を購入しておくことで上場前にソニーFGの株式が入手できます。パーシャルスピンオフにより割り当てられた株式は上場日から売却可能なので、抽選無しで新規上場株式を入手できるようなものですね。権利付最終日は9月26日(金)なので、購入する場合はお早めに!

 

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