トップページ > コラム > ADR(米国預託証券)とは?PayPayもADRで米ナスダックに上場!
2026年3月12日、国内QRコード決済大手のPayPay(PAYP)が米ナスダック市場(NASDAQ)に上場し、大きな話題になりました。今回上場したのはPayPayの「株式」そのものではなく、「ADR(米国預託証券)」です。
ADRは、米国株式市場で海外企業の株式を売買しやすくするためのしくみです。トヨタやソニーグループなどの日本企業をはじめ、中国やインドなど、世界中の企業がADRを利用して上場しています。
このコラムでは、ADRのしくみからメリット・デメリットまで、わかりやすく解説しています。コラムの最後には、これから上場する注目のADRについても紹介していますので、ぜひ最後まで読んでください!
ADRは「American Depositary Receipt」の略で、日本語では「米国預託証券」と呼ばれます。海外企業の株式を米国株式市場で売買しやすくするために生まれました。
インド、中国、ブラジルといった新興国をはじめ、世界には魅力的な企業がたくさんあります。そうした企業に投資したい場合、最初に思いつくのは現地の株式市場で株式を購入する方法でしょう。しかし、言葉の壁や手続きの複雑さがハードルになりますし、国によっては外国人の取引を禁止・制限している場合もあります。
そんな時、便利なのがADRです。米国の銀行(預託銀行)が現地企業の株式を保管し、その株式をもとにADRを発行します。 投資家は、ADRを米国株と同じ感覚で手軽に売買できます。株主と同様に配当金の受け取りや、議決権の行使も可能です。
では、ADRはどのようなしくみで発行され、米国株式市場で取引されるのでしょうか。まずは、ADRが上場するまでの基本的な流れを見ていきます。
下の図の中では、インドの上場企業「B社」が、ADRを発行して米国株式市場に上場します。

<引用:楽天証券より>
ADRが上場するまでの手順は、大きくわけて3ステップです。
ステップ① 米国の預託銀行(C銀行)がインド現地でB社の株式を購入、現地の銀行で保管
ステップ② C銀行が、保有しているB社株式を裏づけとして、ADRを発行
ステップ③ 発行されたADRは、上場審査を経て米国株式市場に上場
ADRは株式そのものではなく、銀行が保管している株式を裏付けとした「預かり証」のようなものです。ADRを購入した場合、その裏付けとなる株式が必ず銀行に保管されています。
「株式を直接上場すればいいのでは?」と疑問に思うかもしれません。
それも不可能ではありませんが、株式を上場するためには、米国基準の決算資料を作成し、厳しい監査を受け、情報開示に対応しなくてはなりません。企業にとって大きな負担になります。
ADRを活用すれば、こうした負担を抑えながら米国株式市場に上場できます。投資家にとっても、米国株と同じ感覚で売買できるため、海外企業へ投資しやすくなります。
預託証券は米国だけのしくみではありません。欧州のGDR、中国のCDR、インドのIDRなど、世界各地の証券取引所で導入されています。日本にもJDR(Japanese Depositary Receipt)というものがあり、シンガポールの企業が2社上場しています。(2026年7月時点)
| 企業名 | 市場 | 事業内容 | 国 |
|---|---|---|---|
| オムニ・プラス・システム・リミテッド JDR (7699) |
東証 グロース |
エンジニアリングプラスチックの流通・製造 | シンガポール |
| YCPホールディングス(グローバル)リミテッド JDR (9257) |
東証 グロース |
コンサルティング | シンガポール |
世界中で利用されている預託証券ですが、一番普及しているのはADRです。理由は、米国にはニューヨーク市場とナスダック市場という、世界最大の株式市場があり、投資家の層も厚いからです。企業にとってADRを上場させることは、資金調達がしやすいだけでなく、知名度の向上につながります。
PayPayも、預託銀行によって発行されたADRがナスダック市場に上場しました。
PayPayは日本国内では未上場ですが、株式会社である以上、株式は存在しています。PayPayのADRは、銀行に保管された約5,500万株分の株式が裏付けとなっています。
現時点でPayPayに投資するには、ナスダック市場でADRを購入するしかありません。ただ、PayPayCEOの中山氏は、東証にも上場する可能性を「否定しない」と発言しているので、今後の動向はチェックしていきたいですね。
ここからはADRを取引するにあたって、事前に知っておきたいメリットやデメリットを紹介します。
ADRには次のようなメリットがあります。
・日本から直接投資するのがむずかしい新興国や、海外の優良企業に投資できる
・特別な手続き不要で、米国株と同じ感覚で売買できる
・「ADR保有者=実質的な株主」として、配当金などの株主還元が受け取れる
最大のメリットは、日本から直接投資しにくい海外企業にも手軽に投資できるところです。
現地の言語や取引ルールを気にする必要はなく、通常の米国株式と同じように売買できます。SBI証券のPayPayの銘柄画面は、米国株の銘柄検索から簡単に探せます。そして「現買(現物買い)」ボタンからそのまま購入できます。操作は通常の米国株式と変わりません。

<引用:SBI証券より>
また、ADRの保有でも、実質的な株主としての権利が認められています。配当金の受け取り、議決権の行使と通常の株式と同様です。さらに、現地の株式市場では100株単位などでしか購入できない銘柄でも、ADRなら米国株と同じように1株単位で購入できます。少額から投資を始めやすいのも魅力です。
ADRに大きなデメリットはありませんが、銘柄によって管理手数料がかかる場合があります。
この手数料は預託銀行に支払われるもので、四半期に一度や年に一度など、1株あたり0.25~5セント程度かかります。購入前には管理手数料の有無や金額を確認しておきましょう。
ADRのしくみや注意点を理解したところで、実際にどんな企業が上場しているのか見てみましょう。こでは、米国株式市場に上場しているADRの中から、代表的な企業を一部紹介します。
ADRとして米国株式市場に上場している日本企業は、製造業や金融機関を中心に、世界的に事業を展開する有名企業が多いです。
| ティッカー コード |
企業名 | 事業内容 | 市場 |
|---|---|---|---|
| TM | トヨタ自動車 | 自動車メーカー | ニューヨーク |
| SONY | ソニーグループ | AV機器 | ニューヨーク |
| MUFG | 三菱UFJフィナンシャル・グループ | 金融サービス | ニューヨーク |
| IX | オリックス | リース・金融サービス | ニューヨーク |
| TAK | 武田薬品工業 | 医薬品製造 | ニューヨーク |
海外に目を向けると、中国やインド、ブラジルをはじめ、幅広い地域の企業がADRとして上場しています。国によっては、海外の個人投資家が現地の株式を直接売買しにくい場合もありますが、ADRなら米国株と同じように手軽に投資できます。

| ティッカー コード |
企業名 | 事業内容 | 市場 | 国 |
|---|---|---|---|---|
| TSM | 台湾積体電路製造(TSMC) | 半導体メーカー | ニューヨーク | 台湾 |
| BABA | 阿里巴巴集団(アリババグループ) | インターネット通販、ITサービス | ニューヨーク | 中国 |
| BIDU | 百度集団(バイドゥグループ) | インターネットサービス | ナスダック | 中国 |
| IBN | ICICIバンク | 銀行 | ニューヨーク | インド |
| INFY | インフォシス | ITサービス | ニューヨーク | インド |
| PBR | ペトロレオ・ブラジレイロ・ペトロブラス | 石油、天然ガス | ニューヨーク | ブラジル |
| NOK | ノキア | 通信機器メーカー | ニューヨーク | フィンランド |
| NVO | ノボ・ノルディスク | 医薬品製造 | ニューヨーク | デンマーク |
| BTI | ブリティッシュ・アメリカン・タバコ | たばこ、ニコチン製品製造 | ニューヨーク | 英国 |
| HMY | ハーモニー・ゴールド・マイニング | 金鉱開発 | ニューヨーク | 南アフリカ |
2026年7月10日には、韓国の半導体大手、SKハイニックスのADRがナスダック市場に上場予定です。上場にあたって発行される株式は約1,779万株で、資金調達額は最大約294億ドル(約4.7兆円※)です。
※1ドル=161円換算
| 会社名 | SKハイニックス(SK hynix Inc.) |
|---|---|
| ティッカーシンボル | SKHY |
| 市場 | NASDAQ(ナスダック) |
| IPOによる 想定調達額 |
最大約454.5億ウォン(約294億ドル) |
| ブックビルディング期間 | 7月6日開始 |
| 公募価格決定日 | 7月9日(予定) |
| 上場日 | 7月10日(予定) |
韓国のSKハイニックスは、売上高世界3位の半導体メーカーです。AI向けのメモリーチップ製造にいち早く力を入れたことで、AI需要を追い風に業績を大きく伸ばしています。IPOの規模は、今年6月に上場したスペースXに次いで歴代2番目で、外国企業としては過去最大です。
SKハイニックスは、韓国株式市場ではすでに上場しています。そのため一部の証券会社では、韓国個別株として、SKハイニックスを取り扱っています。
| 証券会社 | 取引手数料 | 為替手数料 | 決済方法 |
|---|---|---|---|
| SBI証券 | 0.99% (最低手数料9,900ウォン) |
100ウォンあたり20銭 | 円貨または外貨 |
| アイザワ証券 | 1.65% (ネット注文の場合) |
100ウォンあたり10銭 | 円貨または外貨 |
韓国株を取り扱う証券会社は限られていますが、SBI証券や、アジア株に強いアイザワ証券で購入できるので、気になる方はチェックしてみてください。
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